詩(蟹と水仙の文学コンクール受賞作)

令和2年度 蟹と水仙の文学コンクール 高校生の部 奨励賞

「水仙」

似たような表情纏って

はみ出さないように

ありふれたマネキンは

ベルトコンベアーに乗せられて

歯車になって消えていく

見せかけの希望を語る 作り笑いの大人たち

足早に過ぎ去っていく

嘘と日常に溺れて 速くなる呼吸

従順に生き永らえるくらいなら

水面に向けて足掻くのをやめて

首に手を当てて 奪ってしまえれば

どれほどいいだろう

深い水底に向かっておちていければ

どれほどラクだろう

水仙よ 誇り高き早春の花よ

気高き君の横顔 緑に映えた白き花

頭に黄色い帽子を被って

優しく儚く笑っている

光が流れるように散る君であったとしても

今日ここに咲く命

「あなたを信じておいきなさい

目指す道はその手が示すわ」

可憐な少女は空を向く

その輝きに明日を見る