面倒ミント
土が乾いてくると,「喉乾いた」と電話してくる世話焼かせなミント. とにかく人間に世話させるように仕向けてくるので,電話が掛かってこないよう小まめに面倒を見ないといけない.ハッカソン型のインターンで家庭菜園を想定して開発したのがきっかけ.
開発の経緯
オンライン上で行われたハッカソン型のインターン。初対面の就活生同士が集まり,3日間かけてアイデアを形にしていく。
メンバー全員が自宅から参加していたことと,アイスブレイク中にラーメンの話題になったことから,名付けられたチーム名は「家系ハッカソン」。どんな技術があって何が作りたいのか,全くわからない名前になってしまった。
さらに困ったことに,そこに降り掛かってきたテーマは「サスティナビリティ」。あまりに抽象的なテーマに戸惑うチームメンバー。しかし,「家系」と名付けたからには自宅で使えるものがいいだろうという流れになり,
自宅でできる持続可能な生活ってどんなものだ?
と考えた末に浮かんできたのが,家庭菜園で自分で食べる分を自ら育てる生活様式であった。野菜を自家生産できるようになると,
- 必要な分だけ育てて消費することで食品ロスを減らせる
- 外で買うより安価に済ませられる
- 各世帯で栽培できれば,地域全体の生産量を底上げできる
といったメリットが生まれる。
しかし,家庭菜園を続けるのは容易ではない。
- (収穫までが長く,)達成感が得にくい
- (語らず,動くこともない植物と向き合う)孤独感
- 育成失敗のリスク
など,家庭菜園を辞めたくなる瞬間はいくつも訪れる。水をあげるのすら面倒臭い…そんな時,
野菜の苗から電話がかかってきたら…
あなた「???(電話が鳴る音)」
野菜「喉乾いたよー」
あなた「わかった,すぐ水やるね!」
となること間違いなし(?)
そこで本ハッカソンで開発したのがこの家系対話型菜園。センサーで野菜の状況を把握し,電話で育て主に世話してほしいとせがんでくる。また,生育状況をtwitterに公開すれば,同じ野菜を育てている人同士でのコミュニティ形成も可能に。
(画像は構想段階での概念図)
店で買うより育てた方が安いとアピールし,システムをサービスとして提供し月額制にすれば,収益化もできなくはなさそうだ。
体験のイメージ
あくまでも野菜が話しかけているように感じさせるために,セリフはなるべく一人称を心がけた。(e.g. ×「土壌水分量が不足しています」,○「喉乾いたよ〜」)
その他にも照度・温度のセンサを追加し,例えば,
- 照度が低い→「暗いから明るくして〜」→カーテンを開ける
- 温度が低い→「寒いよ〜」→エアコンをつける
と人間が世話したくなるように設計している。
イメージ実現に用いた技術
本システムは以下の二つの機能に大別できる。
- センサを接続してデータを収集する
- データを元にユーザに知らせる
(ハッカソンとはいえ,インターンの一環なのでセンサは企業の予算で買った。)
センサはi2cバスを経由してM5Stackに接続され,そこで計測したデータはAWS上のデータベース(DynamoDB)に格納される。
M5StackをAWSに接続するため,IoT Coreに登録する工程で認証キーを再発行する羽目になり,少し沼ったが,そこからは問題なく開発が進んだ。
あとはLambdaで,値が閾値を超えているかだけの超シンプルな処理を行い,結果に合わせてLINE Bot & Slackで送信した。(期間内に電話番号を発行できず,Amazon Connectで電話かけられなかったため,デモ用の代替措置が必要だった。唯一の心残り…)
いざ審査…!
ハードウェアが組み込まれたシステムを作っていたのは自チームだけだったため,そこは審査員にも評価されてたように思う。
あとは発表,質疑応答を上手くこなしてくれたメンバーに助けられた。
あくまでも人間に世話させる点と,野菜と会話しながら育成していく過程がたまごっちを彷彿とさせるというコメントがあり,特に印象的だった。
結果として賞もいただけたが,それ以上にM5StackやAWS IoT Coreなど,IoTをやる上で必須にもかかわらず,それまで全く触ったことがなかった技術に挑戦できたことが嬉しかった。今後もハッカソンへの参加は積極的に続けていきたい。