救急救援支援システム・救&援
Androidアプリケーションを用いて消防署(救急隊)と迅速に連絡を取り合い、救急車の手配や搬送を早くできないかという試み。 Androidアプリケーションと消防署で使用するWebアプリとを連携させた
GitHub repository:https://github.com/tnyo43/RescueAidAndroid
- 概要
事故や急病で目の前で人が倒れた時、救命のための適切な手当てをするのは以下の二つの理由によって難しい。一つ目は、救急通報の際に要救護者の状況を伝えられないことだ。何から伝えていいのかわからない、どう伝えていいのかわからないとパニックになり、結果として救急車の到着が遅くなってしまう。二つ目に、応急手当ての経験がない人が自分の判断で手当てをするのは心理的障壁が大きいことが挙げられる。救急隊が到着するまでの数分間に行われる簡単な手当てで救命率は大きく上がるが、何も手当てがされず重症化することも少なくない。
この問題を解決するために、医療従事者でない人が緊急時に行う要救護者の状況把握、救急通報、応急手当てを補助するスマートフォンアプリケーションと、それに連携し救急隊が情報を確認するためのWebアプリケーションを作成した。
- こだわったポイント
どんな世代の人でも初めてでも使えるUIを意識して作成した。
スマートフォンアプリケーションの中には、ホームボタンや送信ボタンなどにアイコンを多用したスタイリッシュなUIが多い。そのようなUIは初見では操作がわからなくても使ううちに慣れて高速に操作ができるようになる。一方、医療従事者でない人が救急救命に関わる機会は人生でも高々数回程度で、多くのユーザーは緊急時に初めてアプリケーションを起動することが想定されるため、誰が見ても一目でわかるUIでなければならない。具体的には、表示するボタンの数を減らして操作を制限して戸惑わないようにする、アイコンはあまり使わず文字で説明する、年配の方でも読めるような大きな文字で必要最低限の情報を表示する、などである。
実際の救急の現場で働く人の意見として、地元にある阿南市消防へのヒアリングを繰り返し行った。意見交換をする中で、救急通報では素人の見た詳細な説明よりも大雑把でも早くて伝えわりやすい情報の方が救命率を高められるとわかり、アプリケーションから「はい」か「いいえ」で答えられる質問をいくつか投げかけて状況把握を行うようにした。消防や高専の保健の先生に意見をいただきながら少ない質問で緊急度を測れるよう、質問の順番も工夫した。質問が終わると応急手当ての指示(救急通報や胸骨圧迫など)のガイダンスが表示される。緊急通報時は問診した内容のメモが表示され正確な情報伝達ができる。応急手当ても文字と画像での説明や、胸骨圧迫は圧迫するテンポを音で指示する機能もある。
消防隊の方がみるための、スマートフォンアプリケーションに連携するWebアプリケーションも開発した。救護した人が入力した情報をWebページから確認することができ、救急通報とのダブルチェックでより早く状況を知れて、救急車の出動や搬送する病院の選定をより早く始められる。
完成したシステムを消防の方に見てもらい、「必要十分な情報が得られる」「落ち着いて手当てができそう」と評価していただいた。