課題の解釈・着眼点
衣服は第2の皮膚と言われているよう、衣服は身体があってこそ着用されているように見えています。しかし、それは人の肌の色が背景と違うからです。よくテレビや映画で出てくる幽霊は、身体がこの世に無いため、衣服のみがはっきりと見えています。その、「身体があってこその衣服である」という点に私は面白みを感じ、制作に取り入れようと思いました。
デザイン・表現方法
この課題で、人の肌の色を背景と同じ色にして消し、衣服を透けた白色で制作することにより衣服だけが浮いて見えるというイリュージョンに挑戦しました。身体があるのに、無いように見えてしまうこの衣服は、身体と衣服の関係を新しい視点で見つめ直すことができます。
まるで着用している人が消えゆき、居なくなってしまうかのように思えるこの作品は、まるで煙のようだと思い、煙をモチーフにしています。
煙のように空気を漂い大きな世界と融合したような、身体という縛りを抜け出して最大の自由を手に入れたような感覚。
ですが、この衣服は実際にはナイロンでできている化学物質で、生きている身体はもちろん、煙のように見える衣服ですらも、煙のように消えゆき、空気と融合することなどありません。タイトルに対し、そんなことはできないことだと皮肉を込めた作品でもあります。
肩の部分はナイロンチュールを火で炙り、熱での収縮により布面に表情をつけました。腕の煙を表現した部分は、ナイロンチュールを細く切り、アイロンで熱を加えながら巻いて形成しました。
素材 : ナイロンチュール / 技法 : 加熱・裁縫