蝉達のコーラスが盛況を迎えるさなか、僕と君はじりじりと肌を焦がすような太陽に熱され、 陽炎の揺らめくアスファルトをのろのろと歩いていた。
ひたいと首筋を伝い落ちる塩水は体から水分を奪い、異様に喉が渇いていた。 これで雨でも降ろうものなら、天を仰いで大口を開けていただろう。
君はばたばたとワイシャツの襟を引っ張って扇ぐような動作を繰り返しており、それがすこしも気休めにならないことなど、この茹だるような暑さのせいか気にはならないらしかった。
「あっつい……」
「……近くにコンビニのひとつでもあれば天国だっただろうね」
「本当にそれ。 言えてる」
君はうげ、という顔をして見せ、端正なかんばせを歪めるさまさえ僕には愛おしかった。陳腐な例えだとしても、君は僕にとって真夏の向日葵のような子で、 いつも太陽を見つめるそれのようにまばゆい世界を見つめていた。
そして端役D辺りの僕は、きらきらと琥珀糖のように輝く君の瞳に、あどけなさの残る大人びた横顔に、どうしようもない質量の恋情をいだいている。
この気持ちをどうにかしようとは、おもっていない。 おもうこともないだろう。 端役Dの僕がこうして帰路を共にできていること自体、ひとつの奇跡であり、かけがえのない片想いの想い出であり、 初恋の爪痕であるからだ。
多くのことは望まない。 君の隣を並び歩けるだけ恵まれている。 それでも、もし欲をかくことが許されるのならば、僕は君にただひとつだけ、たったひとつだけ、問うてみたい。
ねえ、あの夏の約束を覚えている?
――という始まりまで執筆したよくわからない作品です。タイトルと書き出しもいつか自サイトで配布するかもしれません。しないかもしれません。