小型船舶用全周囲モニタの開発

OVERVIEW

高専本科時における卒業研究、以下に簡単な背景と実験結果、考察を述べる


はじめに

近年では,不振漁港の活性化のために,プレジャーボート(レジャー用小型船舶)の受け入れを推進している.プレジャーボートの所有者は,漁業者に比べ操船の練度が低い場合が多く,漁港内で漁船等との衝突事故が発生しているという事実が漁業者から報告されている.そこで本研究では,上記のような衝突事故を防ぐため,操船支援を目的とした小型船舶用全周囲モニターの開発を目指す

全周画像合成

全周画像合成の方法について説明する.前節で説明した俯瞰図変換を 4 台のカメラで行い,4 枚の俯瞰図を得る.この時カメラは前後左右の 4 か所に設置する.次に得た俯瞰図をそれぞれ合成する際に重なる部分に透過処理を行う.次に透過処理を行った 4 枚の俯瞰図を合成することで全周画像を得る.最後に俯瞰図同士の境目に線を引くことにより合成時の微妙なずれを消し,継ぎ目の違和感を軽減する.上記の処理の流れを図に示す.


小型船舶上での変換実験

実験結果[右舷]

小型船舶上の右舷にて俯瞰図変換処理を行った結果を以下に示す.魚眼カメラで撮影した画像を図1.A,撮影した画像に魚眼補正を行ったものを図1.B,補正後の画像に対して俯瞰図変換処理を行ったものを図1.Cに示す.図1.Aの結果においては右舷全体を収めることができたが,魚眼補正後は図1.Bに示すように画角が狭まり船尾側と船首側に近い両端を収めることができなかった.更に俯瞰図変換を行ったところ図1.Cに示すように更に画角が狭まり右舷側の一部しか画角に収めることができなかった.

実験結果[船首]

小型船舶上の船尾にて俯瞰図変換処理を行った結果を以下に示す.魚眼カメラで撮影した画像を図2.A,撮影した画像に魚眼補正を行ったものを図2.B,補正後の画像に対して俯瞰図変換処理を行ったものを図2.Cに示す.図2.Aの結果においては船尾と両舷の一部を収めることができた,魚眼補正後は図2.Bが示すように,右舷側で問題だった画角の狭まりが発生しても,十分な画角を確保できている.更に俯瞰図変換を行った結果を図2.Cに示す.船体を上から見たような視点に変換されており,十分な画角を確保したまま俯瞰図変換を行うことができた.

実験結果[船尾]

小型船舶上の船首にて俯瞰図変換処理を行った結果を以下に示す.魚眼カメラで撮影した画像を図3.A,撮影した画像に魚眼補正を行ったものを図3.B,補正後の画像に対して俯瞰図変換処理を行ったものを図3.Cに示す.図3.Aの結果においては船首と両舷の一部を収めることができた,魚眼補正後は図3.Bが示すように,船尾と同様に補正後も船首を十分に写した画像を得ることができた.更に俯瞰図変換を行った結果を図3.Cに示す,船体をある程度上から見たような視点に変換することに成功したが,真上ではなく角度のついた視点に変換されている.

考察

  • 右舷で俯瞰図変換処理を行った結果,画角が入力画像に比べて大幅に画角が狭まった画像になった.原因として,本実験で使用している魚眼カメラは歪みが大きいため,補正時に画像端の情報が通常の広角カメラと比較して多く損失してしまうことが原因と考えられる.しかし入力画像では右舷側全体を歪んではいるが映せているため,補正の方法を見直せば,補正後も画角を確保することができると考えられる.また本実験で左舷での撮影および変換処理は行っていないが右舷と同様の結果になると考えられる.
  • 船尾で俯瞰図変換処理を行った結果,入力画像と俯瞰図変換後を比較すると岸の情報が失われているが,これは先述したように魚眼補正による画角の損失の影響に加え俯瞰図変換処理を行った結果,更に画角を狭めていることが原因であると考えられる.
  • 船首で俯瞰図変換処理を行った結果,俯瞰図変換後に視点が真上ではなく斜めになった原因として,船首にカメラを設置した際の角度が浅かったため,変換結果に影響を与えていると考えられる.また船体の長さが船尾に比べて長いことも原因として考えられる.
  • また変換処理プログラムにおける処理速度は当初約5fps程度だったが,関数呼び出し削減や処理高速化を行い約20fps程度まで上昇した.リアルタイムで4台分のカメラから得た画像を処理しているため,俯瞰図変換や全周画像合成のための透過処理が処理速度低下の原因になっていると考えられる.