春の残影 装丁デザイン

OVERVIEW

知り合いの友人が制作した同人誌の装丁を制作しました。 新書サイズ:W103×H182 左:表紙 右:裏表紙

YEAR 2019

内容:現代詩・短歌

作者は複雑な現代の心を現代詩・または短歌という形で作り上げた。

内容を全て読ませてもらい、「生」「死」「光」「影」「有」「無」など相反するものが絡み合い、それでいて対立もせず、完全に溶け合うこともなく…といった絶妙なバランスでできているとても繊細だけど大きなインパクトを与えるような世界観だと思ったので、そのバランス、繊細さや相反するものをそのまま表紙に表現して、作者の世界をまとめ上げられるようなデザインを目指した。

イラストは私とは別にイラストレーターが担当。頂いたイラストのいくつかの中で、モノクロのものとカラーの2枚がある同じイラストがあったので、それを使わせていただいた。「生」「有彩色」の表紙から始まり、読み終わると「死」「無彩色」の裏表紙で終わる。けれど裏返して表紙に戻すと「生」「有彩色」に戻る…という循環を意識して制作した。

個人的なポイントは、表紙側の半分だけ実際のイラストのいわゆる「ノイズ」の部分を残していること。表紙に置いた「生」というテーマの中で、ノイズ、汚れがあれどそれも含まれてこそ「生きている」ということだと考え、一見汚れとも見える部分をあえて残した。逆に裏表紙側のイラストのノイズは全て消した。表紙・裏表紙の対比をできるだけ明確にしたかった。

表紙案を出した中で、作者の希望で中表紙にしたデザイン。中表紙はゴシック体。最初は表紙もゴシック体で制作しようとしていた。

ゴシック体ではタイトルで世界観の表現をしたいと考え、文字の活用を考えた。

どれも、「噛み合わなさ」「不条理」「ズレ」のようなことを意識して制作した。ゴシック体でのタイトル作りは試行錯誤したけれどとても楽しかった。

元から好きなタイポグラフィがもっと好きになった制作だった。