SEPATIM
「時間」と「距離」に関係性を見出し、時間を距離として知覚できるタイマー。ベースユニットと15秒、1分、10分ずつと設定間隔の違うサブユニット3つから成る。 テクニカルディレクターとしてプロジェクトに携わり、コンセプトの具現化に取り組んだ。制作期間は4週間。
時間を新たなモノサシで計るキッカケに。
このプロジェクトは、コンセプトデザイナーのミヤジマさんのツイートから始まった。
ミヤジマ-コンセプトデザイン @umanomimishinju
過去作品。 メインとサブユニットに分かれており、メインからサブを離した距離で時間を設定できる。 サブは3種類あり、15秒毎、1分毎、10分毎とそれぞれ設定できる間隔が違う。 従来のようにボタンを連打する必要はなくなり、頻繁に使う設定には、その位置に印を置くことで1秒で時間設定ができる。
サブユニットの模様は「点、線、面」で時間の小中大を表している。
※画像は構想初期のもの。
かねてから
吉松「いつか共同制作したいですね!」
ミヤジマさん「いいですね!そのときは是非!」
というお話をしていたので、
「そのとき」を待っていた私は、このツイートを見てここぞとばかりに、
吉松「これ回路から作りたい!」
と勝手に手を挙げて、Maker Faire Kyotoに応募したのが最初のきっかけです。
GOサインを出してくださったミヤジマさんにはとにかく感謝ですね。
コンセプト立ち上げ
まずは、制作に取り掛かるのと同時にSEPATIMの背景と立ち位置を2人で考えることに。
吉松
「僕も引っ越しが済んだのでSEPATIMの制作、本格的に始めます。
それに並行して、近い将来における時間と距離の関係を少し考えてみたいなと、そうすることでよりコンセプトにみんなの共感が生まれるんじゃないかなって。」
ミヤジマさん
「僕の中で現代の時間と距離の関係性って新幹線(高速道路などの交通機関)なのかなと思いました。」
言われてみれば、確かにそうだ。
ミヤジマさんは金沢(北陸新幹線)出身、私も鹿児島(九州新幹線)に縁がある。
新幹線が開通した時、みんな「近くなった」と言った。しかし、物理的距離は変わらない。ということは時間が短くなったことを距離として認識している。
時間≒距離
早い≒近い
みんな何かしら時間と距離に似たような感覚を持っていると思った。
ミヤジマさん
「近い将来、交通機関の発達によってより早くたどり着ける、また、インターネットにより物理的距離の概念が無くなる。そこで、これからより認識していくであろう時間と距離の関係を実生活の動作に落とし込んでみる。
SEPATIMは"時間と距離"を改めて実感できるツールになる。」
吉松
「あと考えたのは、タイマーって時間を確保したいときに使うものだなって。その前提でいくとSEPATIMは、確保したい時間を距離で示すことで、時間と距離の関係を実生活に落とし込む/実感させるとともに、従来のタイマーの問題点も解決できるツールになる。」
交通機関の発達によってより早くたどり着ける。また、インターネットにより物理的距離の概念が無くなる。
SEPATIMはそんな社会を想定して、時間と距離の関係を、タイマーの持つ「時間を確保する」機能をもとに実生活に落とし込もう、という試みであるとここで再確認。
ユーザにもたらす体験のイメージ
SEPATIMは、設定時間を距離として知覚できるタイマーである。
メインユニットと15秒、1分、10分ずつと設定間隔の違うサブユニット3つから成り、日頃よく使う設定はその距離のところに印をすることで素早く設定することができる。
ミヤジマさん
「現に、SEPATIMは僕のバイト経験から生まれたものなので!!
ボタンを30回連打しなくちゃ行けなかったり、連打しすぎて落としてエラーになっちゃったり。そんなモヤモヤがありました。」
そう、これが従来のタイマーの問題点…!なかなかにイライラするものです。私も厨房でアルバイトしてた経験があるのでわかりみが深い。
時間設定が通り過ぎてリセットするはめに…
ボタンを連打する勢いで壁や棚から落ちてしまう
などの問題点を解消することが求められる。
以上の特徴や制約から、動かすのはサブユニットだけにして、その代わりに内部の処理回路は全てメインユニットに集約することに。
これによって、予算と部品点数も抑えることができた。
しかし次は、どのようにしてタイマーをスタートするべきかで悩んだ。
シルエットを変えることなく機能を追加することを目指し、今回はタッチでスタートできるようにした。
また、開発期間が限られていたこともあり、最低限の機能に絞る必要があった。
タイマーのストップ機能は一旦省いて、ストップと同時にリセットを。素早くセットできるこのタイマーなら支障はさほどないのでは?と考えたためである。
この辺に関しては、展示や実験を通してフィードバックを貰う必要有。
さらに、より直感的な操作を実現するために、サブユニットを遠くに離すことで、それぞれの表示を0にすることや、タイマーのリセットをできるように。
↑の画像では、面(10分)と線(1分)を片付けたため、点の15秒のみが画面に表示されていることがわかる。
イメージを実現するために用いた技術
筐体(ミヤジマさんが設計してくださった)に回路を収めるために、小型なArduino nanoの安価な互換機を使用。
ちなみに、筐体は実際の使用に耐えられるABS樹脂で3Dプリンタから出力。初めての体験でした。
また、タイマーの電源には9V角電池を採用。100円ショップでも買える電池でなくちゃね。
距離センサには超音波センサを採用。オペアンプで増幅する必要もないし、比較的安い。精度を求めるなら、ゼロ距離からでも測定できるレーザーの方がいいかなと思うので、誰かお金出してくれるんならそっちにしてみたい。
タイムアップのビープ音は圧電ブザーで鳴らしている。省電力省スペース。
画面表示部には液晶ではなく、有機ELディスプレイを搭載。
小型であれば、液晶より明るく省電力ですし、iPhoneもXから有機ELになりましたもんね。当初からのイメージを壊さないよう黒地に白の表示になっている。
受賞・展示歴
Maker Faire Kyoto 2019にて展示