ELECTRO HOLIDEY エレクトロ・ホリデー
クリスマスイブの夜、暴走したプレゼント製造装置を停止させるため、「サンダ」と「グロース」は工場の中を進んでいく── 「電気の体」と「ロボットの体」を使い分け、2人のプレイヤーが協力して進む横スクロールアクション。
<プラットフォーム>
PC (Windows)
<ジャンル>
2人プレイ専用・横スクロールアクション
<プレイ人数>
2人
<制作に使用したソフトウェア>
- Unity
- Visual Studio
- GitHub Desktop
- Maya
- MotionBuilder
- Adobe Illustrator
など
<制作人数>
9人(プランナー2人、デザイナー4人、プログラマー3人)
<ゲーム紹介>
▼ゲーム紹介映像▼
▼全編プレイ映像(ノーカット)▼
このゲームは、2人プレイ専用の横スクロールアクションゲームです。軽快に動き回ることのできる「ロボットの体」と、金属中を泳ぐことのできる「電気の体」を使い分け、2人で協力してゴールを目指します。
ロボットから金属へ、金属からロボットへ、「2つの状態を使い分けながら、2人のプレイヤーが協力して進む」というのがこの作品のコンセプトです。
このゲームが2人プレイ専用であることには重要な意味があります。「電気」と「ロボット」、2人のプレイヤーがそれぞれ異なる役割を担うことで先に進めるようなギミックがいくつも登場します!
ビリビリとした円形のターゲットマークが表示されていますが、これは「乗り移り」が可能な地点を示します。X or Yボタンでターゲットマークの位置に乗り移りを行います。
ターゲットマークや、乗り移り時の雷のようなエフェクトは、この作品のこだわりポイントの1つです。「乗り移り」が気持ちいいアクションに感じられるよう、デザイナーの方と何度も調整を重ねました。
<制作について>
このゲームは、大学の「ゲーム制作応用」という授業の中で2023年4月~2024年1月にかけて制作した作品です。
この作品は毎年1月に行われる学内イベント「コウゲイゲームショウ2024」にて展示するという前提のもと、制作を行いました。
私にとってこれが、自分の関わった作品を一般の方にプレイしていただける初めての機会でした。来場者の方々に最高のゲーム体験をお届けできるよう、人生最大の熱量で制作に取り組んだ渾身の作品です。
このイベントでは、合計200名以上の方に来場していただきました。さらに、展示作品の人気投票では「ELECTRO HOLIDEY」が1位を獲得することができました!
<担当した作業>
- 企画
- プレゼンテーション
- レベルデザイン
- 進行管理
- プログラミング
- デバッグ
- ストーリー構成
- 絵コンテ作成
列挙するとかなりの数になってしまいますが、まとめるとディレクター兼ゲームプランナー兼プログラマーという役割でした。
<企画/プレゼンテーションについて>
私たちは最初に「電気」というテーマを定めました。電気のビリッ!というエフェクトやサウンドを軸に、ゲームの中心となる「気持ちよさ」を作りたかったからです。
その後は「電気」をテーマにブレストをしました。この時点で「いっそ自分が電流になる」というワードが出ています。
これらのアイデアを組み合わせつつ、「電気の体を持つキャラクターが、ロボットや金属に乗り移る」「このキャラクターが2体いることで、様々な謎解きが生み出せる」という発想にまとめていきました。
「もぐほり!」と同様に、テーマやコンセプト、ゲームデザインの具体例などをまとめたプレゼンテーションを行ったのち、本格的な制作が始まっていきます。
<ゲームデザイン/レベルデザイン>
私はレベルデザインのすべてを担当しています。
- 2人プレイだからこそ成立するギミックを盛り込む
- 片方のプレイヤーが退屈する状況を作らない
- オフライン協力プレイという状況を最大限活かす
このようなことを意識しながらレベルデザインを行いました。「コウゲイゲームショウ2024」で公開する作品だったため、「オフライン協力プレイ」という状況が保証されていることは大きなメリットだと捉えました。
商業作品であれば、シングルプレイに対応させる必要があったり、マルチプレイの状況(オンラインであるか否か、ボイスチャットの有無、オンライン通信の質など)を考慮する必要があります。
今回は「オフラインの会場で、2人のプレイヤーが1つのモニターを眺め、相談しながらプレイできる」ことが確定しているので、これを最大限活かすため、以下のようなことを考えました。
- 2人で相談するという前提のもと、攻略のヒントは少なめにする。
- せーのっ!と言いたくなるような、2人のタイミングを合わせる場面を取り入れる。
そして、
- ロボット同士に当たり判定をつけ、足場は少々せまいと感じる大きさにする。
ということも意識しました。協力マルチプレイを行うゲームでは、プレイヤー同士が互いに邪魔しない、双方の体験の質を損ねないような工夫が施されていると思います。しかし、このゲームではそのセオリーに反するようなデザインも取り入れています。
せまい足場で互いの体がぶつかり合い、落下~!!
こんなことがあれば、相手に「おい!!」と言いたくなるはずです。笑顔で。友達と家のリビングでWiiパーティーをプレイしていたあの頃の笑顔、それをこのイベントでも再現したかったわけです。
実際にこれらの試みは効果的にはたらきました。イベントでこのゲームをプレイしてくださった方々は、画面を指さして攻略法を話し合い、息を合わせて崖を飛び越え、狭所で滑って落下しては大きな笑いが起きていました。
肩を並べてプレイする際の楽しい空気感を活用できたと思います。
また、ミスが多発しそうな地点の前にはチェックポイントを配置するなど、失敗が不快感につながらないようなデザインを心掛けています。
<ディレクション/進行管理>
制作チームのメンバーは計9名でした。私はチームのリーダーとして、進行管理とグラフィック・プログラミング・サウンドなど各方面のディレクションを行いました。
各アセット制作の発注から、実際にUnityにインポートしてのクオリティチェック、リテイクの指示などを行いました。
プログラミングに関しても仕様を決定するだけではなく、すべてのコードに目を通しシステムの構造と実装状況をすべて把握するようにしました。基礎的なクラス設計を私が行ってから他の方に引き継いで完成させてもらったものもいくつかあります。
<ストーリー構成/絵コンテ作成>
時に、20023年12月24日。
クリスマスプレゼント工場ではたらく「サンダ」と「グロース」は、
プレゼント製造装置の暴走を止めるべく、工場の中を進んでいく──
この作品では、ストーリーテリングにも力を入れました。「電気」と「ロボット」を使い分けて先へ進むという状況がそもそも特殊なので、ゴールへ向かうという目標をしっかり意識できるように説得力のある設定を考えました。
「クリスマス」という要素は、「電飾」のイメージがあることや、テーマカラーが赤と緑に定まることからグラフィックデザインのヒントなると考え採用しました。
「製造装置の暴走を止める」というのは、ゴールを意識するための設定です。敵キャラやボスが存在しないゲームなので、ゴールには巨大で派手なオブジェクトが必要だと考え、ゲームの目的地をこの製造装置にしました。
(サンダとグロースは、アルファベット表記ではそれぞれThundaとGlowsです。)
同時に世界観を補強する要素として、キャラクターの会話イベントを実装しました。2体のキャラクターの能力は全く同じなので、デザイン以外で個性を持たせるために会話イベントは役立ちました。攻略のヒントを与える存在でもあり、このゲームには欠かせない要素です。
カットシーンやイベント時の会話テキストは私が書いています。サンダは穏やかで慎重、グロースは大胆で頼りがいのあるイメージです。
エリアチェンジ時やリトライ時などには、グロースが右側(=進行方向側)にスポーンします。これはサンダとグロースの性格を反映した仕様で、細かなこだわりです。
オープニングとエンディングにはカットシーンが再生されますが、それらの絵コンテも私が作成しています。
<プログラミング/デバッグ>
もぐほり!では補助的にプログラミング作業を行いましたが、今回はゲームの中心となるコードを複数記述しています。主にキャラクターの挙動にかかわる部分と、「乗り移り」アクションの処理全般を担当しました。
中でも力を入れたのは「ノード」システムです。「乗り移り」の対象となる金属のオブジェクトの位置は、すべて「ノード」という点同士の繋がりで表されています。電気の体で泳げるようにしたい位置にこのノードを配置していくことで、「乗り移り」の実行対象となります。
Gizmosを利用してエディター上でノードの位置を可視化するだけでなく、不正なノードの位置や設定を自動で検出するなど、ノーコードで効率的にレベルデザインが可能な仕様となっています。プランナー・プログラマー双方の視点から、制作を効率化するための仕様を考えていきました。
制作の終盤ではテストプレイや難易度調整と並行してデバッグを行い、見つかった不具合にひとつひとつに優先度を設定しながらコードを修正していきました。イベントの展示ではゲームが進行しなくなる・リトライが必要になる不具合は一切発生しませんでした。
<制作を振り返って>
コウゲイゲームショウという具体的な目的を見据えながら制作を行い、作品を実際にプレイしていただくという貴重な経験になりました。
自分たちの意図した通りにプレイしてもらえるか、コンセプトを楽しんでもらえるか、不安もありましたが、コウゲイゲームショウでは好評を博すことができました。
自分のスキルをすべて投入し、ベストを尽くすことのできた作品だと思います。